エイブリック株式会社
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Close海外各社の会計データをSAP Business Oneで統合 戦略的データ活用基盤として幅広く活用
- グローバルに事業を展開する企業にとって、海外拠点の業務データをいかに効率よく統合/管理するかは、成長戦略を考える上で最重要課題の1つだ。アナログ半導体専業メーカーとして世界に最新のデバイスを提供するエイブリック株式会社は、セイコーインスツルからの分社独立を機に、SAP Business Oneを海外拠点の新たな基幹システムとして導入。経営状況の可視化などのガバナンス強化と、運用負荷の軽減やコスト改善を急ピッチで進めている。
分社独立を機に基幹システムの統合を決意
エイブリック株式会社は、セイコーインスツル株式会社のクオーツウォッチ用CMOS ICの研究開発部門として発足以来、各種機器用アナログ半導体の開発/製造を手がけ、2016年には同社から分社独立。以来、自動車やスマートフォン、医療機器などさまざまな最新機器を支えるキーデバイスとして安心/安全かつ高品質な製品技術を提供してきた。
エイブリックは分社独立をきっかけに、新たな基幹システムの導入を検討した。それまではセイコーインスツルのシステムを利用してきたが、今後は独立した企業として自前のシステムを持たなくてはならない。また独自にシステムを導入/運用してきた複数の海外販社についても、新システムへの統合が決定した。エイブリックの財務本部 情報システム部 情報システム二課長 熊田昌子氏は次のように当時を振り返る。
「拠点ごとに運用されてきた基幹システムを統合することで、グループ全体のガバナンス強化や業務の効率化、コスト改善を実現したいと考えました。単なるシステム刷新ではなく、経営/業務視点も含めた全面的なデータ基盤の見直し/再構築が狙いでした」
情報システム部では、まずこれらのコンセプトを経営陣や各業務部門へ提案し、メリットを理解してもらった上で、社内のコンセンサスを拡げていった。提案内容としては、更新対象となる基幹システム本体だけでなく、ロジスティクス系など周辺も含めたシステムの全体像を描く必要があること。さらに海外拠点のあり方としても、グローバルでのシステム統一が重要といったことがポイントとなった。この提案は最終的に経営戦略会議でも承認され、システム刷新プロジェクトがスタートした。
ワールドワイドの実績とサポート力を要件にベンダーを選定
新しい基幹システムでは、従来使われてきた受発注用システム「COSMOS(コスモス)」から、会計に関わる広範な業務処理(財務会計/管理会計から、予算、債権債務管理まで)を新しいERPパッケージに切り出し、海外関係各社のシステムもここに統合する方針が決められた。独立後も受発注は引き続きCOSMOSで行い、ERPと連携させることも決まった。ERPパッケージの選定要件は、まず複数の海外拠点での利用に必要な多言語対応/多通貨対応。加えて分社のタイムリミットが決まっているため、開発/導入が容易であることも求められた。
同社で複数の製品を比較した結果、ワールドワイドですべての要件に対応できる製品はSAP ERPともう1つの大手ベンダー製品だけとわかったが、これらはエイブリックの海外販社で使うにはオーバースペックだった。そうした所にSAP Business Oneという製品があると聞き、複数のベンダーに話を聞いたが、ベンダー側の問題として海外実績が少なかったり、対応地域がアジア中心でヨーロッパに展開する場合は日本からコンサルタントを連れて行かないと支援が難しいなどの弱点があった。次々にあたっていく中で、最終的にbe one solutionsをパートナーとして採用した。
「海外導入実績が豊富な上、世界各国に自社のコンサルタントがいて、現地で直接サポートが受けられる点を評価しました。しかも、be one solutionsジャパンを窓口として各国拠点の設計や進捗管理などを国内からコントロールできることが決め手となりました。be one solutionsがいなければ国ごとに個々に導入せざるを得ず、そうなれば当初考えていたシステム統合という方針とはかけ離れてしまったはずです」(熊田氏)
安定運用と使いやすさを海外拠点のスタッフが高く評価
SAP Business Oneの導入作業は、対象となる香港、台湾、アメリカの3社で同時進行していった。混乱を避けるため、まず3社共通の部分となる要件定義などを先行させ、各国のプラスαとなる部分を構築していくという2段構えだ。
今回の導入では、香港の現地スタッフが充実していたため、香港がテンプレート作成などをリードして進め、ここで完成したものを台湾、アメリカに展開していった。
「各拠点3カ月くらいで導入できると聞いていたので、そんなに切迫したスケジュールにならずに済みました。もちろん追い込みではテレビ会議を使って随時連絡を取り合いましたが、現地スタッフの努力もあって作業時間を確保できました。日本で決めた方針をbe one solutionsが各国のコンサルタントにあらかじめ伝達してくれていたおかげで、各拠点展開時の作業レベルが統一されていたことに加え、香港にいるbe one solutionsのエリアマネージャーが全体を統括してくれたので、そういった体制にも非常に助けられました」(熊田氏)
この結果、予定通り2017年4月には3社同時に運用を開始。同年秋から導入が始まった中国・深圳も2018年2月にカットオーバーして、現在は海外で4拠点が稼動している。導入から1年半だが、すでにSAP Business Oneのメリットは表れている。
「何より、IT専任者のいない海外拠点でトラブルなく運用できているのが大きいですね。使い方もわかりやすく、ユーザーの担当者が入れ替わってもすぐに後任が使い方を憶えられます」(熊田氏)
もともとSAP ERPを使用していた香港やアメリカでは、SAP Business Oneが非常に使いやすいと評価されている。また現地ローカルのERP製品を使用していた台湾でも現場スタッフからは好評で、スムーズに運用できていると聞く。
戦略的データ活用基盤として質的向上を目指す
SAP Business Oneへの移行は、当初は予期していなかったメリットももたらした。
「日本の経理部門から、海外各社の会計データを直接参照できるので、リアルタイムで現地の状況を確認しながら、何か問題が見つかればいち早くサポートしたり、必要に応じてガバナンスを効かせるといったことが可能になってきました」(熊田氏)
この他にもさまざまな気づきが現場のユーザーから寄せられつつある。こうした声を背景に、同社ではこの先、新しい基幹システムをさらに戦略的データ活用の側面から充実させていくと熊田氏は語る。「もちろん海外の未導入拠点(韓国・ドイツ)への展開も重要ですが、その前提としても、グローバルで統合されたデータをさまざまな切り口から利用していく『質的向上』に当面はフォーカスしていきたいと考えています」
また各国の拠点では、他の拠点で何が起きているかを知ることはなかなか難しい。
「海外各社への情報の橋渡しとしてSAP Business Oneを活用しながら、経営から現場までシームレスに情報の共有/活用が拡がっていくようなシステムに育てていきたい」と語る熊田氏。エイブリックのデータ活用戦略の今後に、これからも注目したい。